理性が消える…『スタンフォードの監獄実験』


2009年04月14日

1971年8月。アメリカのスタンフォード大学、フィリップ・ジンバルドー教授指導の元、ある心理実験が行われました。
普通の一般人21人を集め、10人と11人、ふたつのグループに分け、10人グループを囚人、11人グループを看守としての役割を与え、刑務所を模した施設の中でそれぞれの役割を演じるように指示しました。
予定実験期間は2週間。刑務所内には時計は無く、経過時間が分からないようになっています。窓もありません。
囚人役には囚人服を着せ、看守役には看守の制服を着用させ警棒を持たせました(ただし暴力行為は禁止)。
『囚人らしさ』『看守らしさ』をより演出するため、パトカーを使って逮捕し、指紋も採取。刑務所内では囚人役の足に鎖を巻きつけるなど非人道的とも言える状況におき、被験者を観察しました。

実験開始後、看守役へ『反抗した囚人には、暴動を起こすのを防ぐために罰則を与えるように。ただし暴力行為は行ってはいけない』との指示が出されました。
看守役はその通りに囚人役に罰則を与えていましたが、次第に看守の行動がエスカレートしていき、反抗的な囚人に、独房へ監禁する、裸にする、監房内のバケツに排便を強要するなど虐待とも言える非人道的な罰則を与え始め、ついには暴力行為にまで発展しました。
たまりかねた囚人役の一人が実験中止を訴えましたが実験は続行。何人かの囚人が離脱し、精神錯乱を起こした囚人もいたと言います。

数日後、ジンバルドー教授の知人がこの実験の現場を訪れ、その悲惨な状況に驚き、強く抗議しました。
そうしてこの実験は2週間の予定が6日目にして中止される事となったのです。

実験を始める前の被験者は、もっと軽い気持ちで参加するつもりだったそうです。しかし与えられた役割を演じていくうちに、(あくまで"実験のために演じる"はずなのに)行為はエスカレートしていき、看守役は非人道的行為を行い、囚人役は精神的に追い詰められる結果になりました。
そして実験を監視している筈のジンバルドー教授もこれほど悲惨な状況にあるのに実験を続行しようとした。

"役割""権力""環境"は人の理性のタガを外してしまう可能性があるようです。


この実験の話をモデルに『es(エス)』というタイトルの映画が制作され、公開されました。



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